MuSASHi RTハルク・プロの鈴鹿8耐参戦レポート

MuSASHi RTハルク・プロより今年の鈴鹿8時間耐久レースの参戦レポートが届きましたのでご紹介させていただきます。


今年のMuSASHi RTハルク・プロは、チームのエースライダー高橋巧に、ワールドスーパーバイク選手権を戦うレオン・ハスラム、ワールドスーパースポーツ600を戦うマイケル・ファン・デル・マークというライダー編成で参加することとなった。レオンは8耐の経験があるが、マイケルは初めての参戦となる。
 7月に入ってから2回ほど行われたテストに外人二人も参加。スタッフは積極的にコミュニケーションを図り、チームとして8耐が戦えるよう準備を進めていった。


鈴鹿8時間耐久
 木曜のフリー走行から三人ともに高いアベレージでラップすることができ、マシンも順調に仕上がっていく。特に二十歳の若いマイケルは走行毎にタイムを伸ばしていき、初めての1000ccマシンで初の耐久レースと本人にとって初のチャレンジばかりという状況の中、見事な成長を見せる。
 心配なのがレオンで、ワールドスパーバイクのレースで大転倒を喫し、ケガが完全に治っていないため、ライディングに若干の不安を抱える。ところが走り出すとそのケガを感じさせない高いアベレージタイムで走り、チームサイドが抱いていた不安を一蹴する。
 金曜の公式予選では第1ライダーの高橋が2分8秒366、レオンが2分8秒472、マイケルが2分7秒879と非常に近いタイムを記録。総合4番手に付け、トップ10トライアルに進出した。
 この後に行われた夜間走行のフリープラクティスでも総合4番手に付けることができた。
 土曜の午後に行われる予定だったトップ10トライアルは、コンディション変化を懸念して計時予選に変更された。このセッションでマイケルが2分7秒260をマーク。これがチームのファステストラップとなった。
 スターティングリッドは3番手を獲得。好位置から決勝をスタートすることになった。
 いよいよレースがスタート。スタートライダーを務める高橋はまずまずのスタートを切り、トップグループに加わる。急に上がった気温の影響もあり、トップグループのタイムは2分10秒台と今一つ上がらない。そんな中で様子を見ていた高橋だったが、周遅れが出始めたタイミングでスパート。トップに出るとタイムも2分9秒台に上げ、一気に後続との差を付ける。
 そのままトップで第2スティントを担当するレオンにマシンを託す。これを受けたレオンは焦らず、自分の担当パートを安定したペースでラップ。2位に順位は落としたが、十分トップを射程距離に捉えた状態で第3スティントを担当するマイケルにマシンを渡す。
 初の鈴鹿8耐を戦うマイケルにとって次々と現れる周回遅れ、急に上がった気温など懸念される材料は多かったが、チームのファステストラップをマークするペースで周回を重ねて見せる。そうしたマイケルのハイペースライディングが、トップを走るチームにプレッシャーを与えたのか、デグナー2個目で転倒。これでマイケルがトップに出る。ところがそのマイケルに、以前の転倒で痛めたケガの影響が出始た。左手がしびれだしたことから、予定した周回数をこなせずにピットイン。以後、レースは高橋とレオンの二人で戦わなければならなくなった。
 チームの予定ではもっとも走行数を減らすはずだったレオンだが、この厳しい状況を応え、3スティントをこなす。安定したラップを刻む二人の走りにより、ラスト30分となったタイミングで2位との差は1ラップに広がっていた。
 ところがここで雨が降り出してきた。
 上位を追いかけるチームの中ではピットインし、レインタイヤに交換してラップタイムを上げるマシンも出てきたが、高橋は重ねてきた経験をフルに生かし、ミスのない丁寧なライディングを続けていく。
 無事、高橋は自身4スティント目となるこの厳しいパートを走り抜き、トップでチェッカー。チームに鈴鹿8耐2勝目をプレゼントした。



本田重樹監督「今回のレースはハルク・プロとして初となる外人ライダーとのジョイントとなり、不安は正直ありました。鈴鹿8耐というレースはチームクルー、ライダーすべてのコミュニケーションが取りきれないと、失敗やトラブルに即つながるからです。ですが二人の外人ライダーはレースに対してとても真摯で、我々に対しても敬意を持って接してくれ、事前に懸念していたようなことはまったくの杞憂に終わりました。チームの作戦を100%受け入れてくれ、それが勝利につながったと確信しています。我々がこれまでに経験したことのない組み合わせでレースを戦ったのですがうまくこれをこなすことができて今後、ハルク・プロのレースに幅を持たせることができた、大きな意義のあるレースとなりました。武蔵精密工業のスタッフもいい仕事をしてくれ、また大応援団が駆けつけてくれて、とても強力なバップアップをしていただきました。本当にありがとうございました。また来年もぜひこの三人で、8耐2連覇にチャレンジしたいと思います。」


堀尾勇治8耐チーフマネージャー「正直、事前テストがうまくいっているとは言えないような状況で、さらにはチームとして初めて外人ライダーを迎い入れて8耐を戦うということで懸念材料は山積みでした。ですがチームサイドとして事前に準備したことがレースウイークに入ってすべてをうまく運んでくれて、三人のアベレージタイムも高いレベルで安定。アクシデントも起きなかったので決勝用として温存したマシンを予定通り、いちばんよい状態でレースに投入することができました。来年もまた、この三人で戦いたいですね。もっと強いレースができると思います。」


高橋 巧「体力的には自分の3回目のスティントが厳しくてタイムが上げられず、苦しい走りとなりました。雨となった最後のスティントはとにかくミスを出さないよう、コンディションを冷静に見極めることだけに集中しました。前回の優勝は足を引っ張ってばかりだったのですが今回は多少、チームに貢献できたかなって思うので嬉しいです。」


レオン・ハスラム「ケガをしていて8耐を戦うことはとても厳しいということは認識していましたが、世界レベルのチームでホンダの素晴らしいマシンを走らせる機会なので、話があったときに出たいと即答しました。テストからチームに合流し、このレースウイークも一緒に戦いましたがすべてに渡って素晴らしく、レースに集中することができました。こんな素晴らしい環境でレースが戦えるチャンスを与えてくれたホンダ、ハルク・プロ、武蔵精密工業を始めとしたたくさんのスポンサーの皆さんに感謝します。また来年もぜひ鈴鹿に戻り、このチームで2連覇に挑戦したいと思います。」


マイケル・ファン・デル・マーク「初めての鈴鹿8耐、初めての1000ccマシンということで不安はありましたが、最初に声をかけてくれたHRCのスタッフが『いいチームでマシンもいい状態だから、持っている力をフルに発揮させられるはず。自信を持ってチャレンジしてみるべき』とアドバイスしてくれたので、参戦を決めました。実際にテストに合流して、チームスタッフ全員が素晴らしい仕事をしており、マシンも走行毎に確実に進化していくので自分は速く走る、ということだけに集中することができました。決勝では以前痛めたケガの影響で1回しか走行できず、チームに迷惑をかけてしまったのは本当に申し訳なく思います。この経験を生かし、来年はさらに成長してハルク・プロに戻ってきたいと思います。」