地球温暖化防止のため、自動車メーカーは排出ガスのより少ないクルマ造りを目指しています。つまり省燃費性能に優れたクルマです。オイルの役割は重要で、エンジンオイルも、ギアオイルもこれには大きな影響を与えます。しかしこの省燃費性能に優れたオイルというコンセプトにも日米とヨーロッパでは違いがあります。特に粘度でです。
日米のオイルの傾向は、徹底してこの省燃費性能を高めることを狙ったものです。5W20とか0W20とか、低粘度オイルがそれです。オイルはエンジンの中で油膜を作りムービングパーツ間の摩擦を軽減するのが役割の一つですが、オイルにはそれ自体に粘性があり、それがエンジン内部で抵抗になり、効率の妨げになるという矛盾点があります。そこで極めて粘度の低いオイルにして、この粘性による抵抗を減らしてやろうとしているわけです。とにかくこの省燃費の性能こそがオイルの性能の中で最優先としているのです。
もちろんこれにはマイナス面もあり、オイル自体の耐久性能、ムービングパーツへのプロテクション性能などがある程度犠牲にされることになりますが、そこは配合技術などにより克服すべし、というスタンスです。
一方ヨーロッパはというと、低粘度化は日米ほどには現在は求められていません。0W20や5W20は皆無ではないでしょうが、低粘度といっても5W30や0W30止まりです。低粘度化が及ぼすマイナス面を軽視はできないといった見方があるのでしょう。磨耗防止性能、オイルの酸化防止性能、低揮発性など粘度といささかの関連がある性能について、ある程度高めの粘度でマージンを確保しておいたほうがよいという考え方です。前回書いたように、アウトバーンなどでの走行を考慮するとなおさらマージンが必要です。
また、環境問題として考えた場合、オイルの寿命を延ばして廃油の量を減らしたり、オイルの揮発量を抑えたりすることで環境への負荷を抑えられるという考えもあるようです。それには徹底した省燃費、すなわち低粘度化は不利であると。日米とヨーロッパのエンジニアリングに考え方の差が依然あるということでしょう。
なお、ヨーロッパ車に0W20や5W20のオイルを入れると、深刻なトラブルを引き起こす場合もあるので、ご注意を。また、古めの車に入れるのもご法度なのはいうまでもありません。
日本クラシックカー会報誌「オイル・色々ばなし−9」(当社営業部長寄稿)より
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