SUPER GT Rd.2レポート富士

Round2:FUJI GT 500km RACE


5月3日(予選)天候:曇り コースコンディション:ドライ
5月4日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ


General comment

 国内レースの最高峰として、最も高い人気を誇る、AUTOBACSSUPERGTシリーズ。その第2戦「FUJI500kmRACE」が、ゴールデンウィーク真っ只中の富士スピードウェイで開催された。

 豊富な車種のバラエティが魅力のGT300に、LMcorsaが送り込む車両のうち一台が今年からフェラーリ488GT3となったのは、すでにご承知のとおり。ベテランの新田守男と都筑晶裕が新たなタッグを組んで挑んだ岡山国際サーキットの開幕戦では、予選では9番手、決勝レースにおいては5位でフィニッシュを果たし、まずは上々の滑り出しを切ることに成功した。特に都筑は1年ぶりのスーパーGTだったにも関わらず、まったくブランクを感じさせない走りを見せてくれたばかりか、どのチームもできなかったタイヤ無交換作戦において、完璧にいたわって周回を重ねたことが、好結果の原動力ともなった。

 今回は500kmレースということで、常にチーム帯同してアドバイザーを務める脇坂薫一も第3ドライバーとして登録。強力な助っ人を迎えて、前回の5位より上を、もちろん表彰台を目指すこととなった。

 先にも触れたとおり、ゴールデンウィークに開催されることもあって、スケジュールも若干変則的に火曜日からの走り出しとなり、決勝が行われるのは水曜日。公式練習において、最初に「JMS LMcorsa 488 GT3」のステアリングを握った新田は、ニュータイヤを装着していきなり予選モードで走行。持ち込みのセットがピタリと決まっていたこともあり、いきなり1分37秒091を記録してトップに立つと、もうその座から離れず。その後は決勝セットを詰めるべく、何度もピットインを行って周回を重ねていく。

 そして、50分を経過したところで都筑にバトンタッチ。新田が16週も走って、すでにピークを過ぎたタイヤでロングをかけて限界を探ることに。ほぼ1時間を経過したところで赤旗が出てしまい、本来ならば、そのタイミングで行われるはずだった予選シミュレーションができなかったのが惜しまれる。その後、脇坂もマシンに乗り込み、終了間際には都筑が最終確認を行った。その結果、一発の速さだけでなく、コンスタントラップにも優れることが確認され、まさに実り多い公式練習となった。


予選結果 11th(1'36"954)


 予選はノックアウト方式で行われ、GT500とGT300が分かれて15分間のQ1を走行。GT300では上位14台が、続く12分間のQ2に進出を許される。Q1に挑んだのは新田で、前回同様、路面状態の安定を待ち、計測開始から3分を経過したところで「JMS LMcorsa 488 GT3」とともにピットを離れていく。ウォームアップはより入念に、2周を充てることに。最初のアタックで、いきなり1分37秒の壁を打ち破り、1分36秒941をマークした新田は、続けてアタックするもクリアラップが取れず、36秒969に留まってしまう。それでも8番手につけたものの、走路外走行があったとしてベストラップ抹消の波乱が・・・・・・。とはいえセカンドベストタイムが9番手相当だったため、問題なくQ1突破を果たすこととなった。
 続くQ2に挑んだ都筑は、新田からのインフォメーションをもとにウォームアップを2周しっかり行ってからアタックを開始。まずは1分37秒431を記し、次の周には36秒945をマークする。さらなるだめ押しを狙ったラストアタックでは37秒213に留まるも、11番手から決勝に挑むこととなった。


決勝結果 6th(101laps)


決勝当日の未明に降った雨は、強い風を伴っていたこともあり、その影響が心配されたが、早朝にはやんでいたばかりか、強い日差しは瞬く間に路面を乾かし、フリー走行が始まる頃には一部にウェットパッチを残すのみとなっていた。30分間のセッションは新田、都筑、脇坂の順でドライブ。それぞれ1分38秒546、39秒546、39秒792とベストタイムに大きなばらつきがないことが確認できたことが、最大の収穫となった。
 今回のスタート担当は新田。「JMS LMcorsa 488 GT3」がスターティンググリッドに並ぶ頃には、路面も完全に乾いていた一方で、気温の上昇は予想以上。一時は3スティントのうち1スティントをタイヤ無交換とすることも検討されたが、リヤタイヤがやや厳しいことをドライバーが訴えていたこともあり、確かなタイヤ選択で挑むことに。
 ターボパワーを炸裂させて、スタートからのジャンプアップを狙った新田ながら、車両それぞれ個性が異なり、何度も行く手を阻まれてしまったせいで、オープニングラップは11番手のまま。とはいえ、ストレートを駆け抜けるごとに華麗なオーバーテイクショーを演じ、5周目には8番手に浮上。その後はGT-Rを相手に7番手争いを繰り広げるも、ストレートで引き離される展開が続いてしまう。それでもライバルが早めのドライバー交代を行うたび、新田は順位を上げて38周目からは暫定ではあるが、トップに浮上する。

 そして、42周目に都筑と交代。注目すべきは、これより長く走り続けられたFIA-GT3は、他に一台しかいなかったこと。前回のレースではタイヤへの負担の少なさをアピールしたフェラーリ488GT3だが、今回はJAF-GT並みの高燃費もアピールした。8番手でバトンを託された都筑は、今回もタイヤマネージメントをしっかり行いつつ、ピットから無線で指示があったときには確実にブッシュ。ポジションをキープしつつ、コンスタントにラップを重ねていた。そんな矢先に、まさかの落とし穴が・・・・・・。
 65周目にGT500車両のアクシデントがあり、セーフティカーがコースイン。そのため、せっかく都筑が築き上げていたマージンが、水の泡となってしまったのだ。70周目にセーフティーカーが離れると、すかさず「JMS LMcorsa 488 GT3」をピットに呼び寄せ、代わったばかりの脇坂を5番手に上げることには成功したが、前との差は著しく広がっていた。迫りくるのは再びGT-R。よりによってストレートパフォーマンスに優れる相手を抑え続けるのは、さすがに至難の技だった。91周目に逆転を許し、結局6位でのフィニッシュと、前回よりひとつ順位を落とすこととなった。ただし、しっかり高ポイントを稼いでランキングの上位はキープ。

 本来ならば次回のレースはオートポリスで行われるはずだったが、熊本地震の影響は予想以上に大きく、中止が正式に発表された。そこで次なる舞台はスポーツランドSUGOに変更。コーナリング自慢のフェラーリ488GT3が、そう多くないウェイトハンデで挑めるのは、むしろチャンスに転じるかもしれない。期待は高まる一方だ。



Director's comment


■チーム監督 小林 敬一

最初の公式練習からタイムがよく、レースのラップもタイムも3人ともよかったんですが、ピットに入れるタイミングが・・・・・・。第1スティントを担当していた新田選手はもちろん、第2スティントを担当した都筑選手、ふたりともいいタイムで安定して走っていたので、ちょっと引っ張ってしまったところでセーフティーカーが入ってしまい、後ろに対してマージンをすべてなくしてしまいました。規定周回を満たすためには、都筑選手をセーフティカーが入る直前にピットに戻すのは不可能だったにせよ、もっと緻密な戦略を組んで先にドライバー交代を済ませておけば、逆に前を詰める展開にできたのに・・・・・・。逆に我々が迫られるレースになったのが悔やまれます。最終スティントを担当した助っ人の脇阪選手もいろいろありながら、しっかり冷静に走ってくれただけに、残念です。


■ドライバー 都築 晶裕

まず予選ですが、チームの戦略ではQ1を担当する予定でしたが、公式練習で赤旗中断もあり、予選シミュレーションができなかったので、新田選手にお願いすることにしました。そんなわがままを聞いてくれたチームに対してまず感謝します。レースでは新田選手がスタートから安定した走りで、ドライバー交代のタイミングで暫定ではありましたが、1位でバトンを渡してくれたおかげで、気合いを入れてコースインできました。その甲斐もあって、ミスをしないことを前提とし、走ることに集中できました。ペース的にも悪くなかったので、SCランの前には後ろにいたチームが表彰台に上がっていたのを見ると、あの場面が明暗を分けてしまったようですね。しかしながら、新田選手、脇阪選手を含め、チーム一丸となって戦い、勝ち得たポイントは大きいと思います。岡山に続いて入賞を果たせましたが、まだまだポテンシャルのあるクルマなので、これに満足せず、次戦SUGOでは表彰台に上れるよう、上を目指していきたいです。


■ドライバー 新田 守男

悔しいレースでした。タラレバはないんですけど、僕らにとってセーフティカーはいい方向に働きませんでした。せっかく離れていたチームが、いいポジションに来たし、ピットがJAF-GTは早いから、そこで逆転を許しちゃうというのは、それもレースだから仕方ないけど、やっぱり悔しい。表彰台はちょっと見えたけど、レースとしては我々が思っていた展開には近かった。ただ、今回の手応えからすれば、そんなに簡単じゃないですけど、どこかで(1位を)獲りたい、という気持ちはまた強く感じました。


■チーム監督 脇阪 薫一

ピットを出たところから無線が通じず、それはまぁ、そういうこともあると思っていたので、大きな問題ではなかったんですけど、その後に接触もなく、右のミラーが下に向いてしまったんです。右のミラーがないというのは右回りの富士では、かなりマイナスでGT500を行かせるという部分において、かなり手こずりました。もし、それがなかったら、5位だったんじゃないかというのはありましたね。ただ、しっかり走り切って、自分でも多く分かったところがあったので、次に乗る予定の鈴鹿に活かしていきたいです、勝つことしか考えていませんので。


■エンジニア 成澤 健二

富士は厳しいかなと思っていたんですが、公式練習からいいタイムが出て、意外とローダウンフォースのセットでもドライバーがうまく乗ってくれました。決勝ももうちょっと行けるかなと、公式練習の手応えからは感じたんですが、う〜ん、不運もありましたね。ただ、これだけストレートで稼ぐためにダウンフォースを削っても、けっこう走ってくれましたから、収穫は十分にありました。このあたりを今後につなげたいと思います。