スーパーGTレポート(岡山公式テスト)

昨シーズンに続いてLMcorsaは、OTGモータースポーツとインギングモータースポーツとのジョイントで活動を継続していく。60号車は昨シーズンデビューのレクサスRC F GT3を、3年目のタッグとなる飯田章選手を吉本大樹がドライブする。また、51号車はBMW Z4 GT3からフェラーリ488 GT3にスイッチし、新田守男選手が継続して起用された一方で、都筑晶裕選手が新たに加わることとなった。


都筑選手は2008年にポルシェカレラカップジャパンでチャンピオンを獲得した後、スーパーGTには09より出場。ポルシェ911GT3RSRをドライブしていた11年には表彰台にも上がり、入賞経験も豊富に持つドライバーだ。昨年は活動を休止していたものの、今年2月に岡山国際サーキットで行われたN1-86レースではブランクをまったく感じさせないドライビングを披露し、関係者の期待をより高めることとなった。


なお、昨シーズンまでの新田選手のパートナー、脇阪薫一選手も第3ドライバーとして登録され、第2戦・富士・鈴鹿は出場、かつ全戦をチームと帯同する予定となっている。

3月19〜20日岡山国際サーキットで行われた最初の公式テストに現れた488は、ボディのカーボン地そのままの状態から分かるとおり、今回が国内初走行。イタリアで完成後、新田選手がシェイクダインを行ったままのセットからの走りだしとなった。今回は日本でのデータがない為、車両のフィーリングを確認しながらセットアップすることに専念。経験豊富な新田選手主導のもとセットだし、それを都筑選手が確認という形での走行メニューを設定。セッションは土曜日、日曜日の午前と午後に2時間ずつ、計4回の計測が予定されていた。そのセッション1はあいにくのウェットコンディションに。未明まで降り続いていた雨の影響が残ってしまったためだ。そのため、488 GT3はしばらくピットで待機。コンディションが落ち着き始めた20分目からの走行開始となった。最初にコクピットに乗り込んだ新田選手は、ウェットタイヤを装着。フィーリングチェックを行った後、ここで初めて都筑選手が488 GT3に乗り込んだ。


やがて路面は徐々に乾いていき、1時間を経過する頃にはドライタイヤの装着も可能になってくる。そんなコンディションの向上に合わせてセット変更を繰り返しそれに伴いタイムも縮まっていき、都筑選手と新田選手が交互にドライブする中、残り10分となったところで新田選手が1分28秒414をマークし、3番手につけることとなる。何よりも驚きだったのは、他の新しいFIA-GT3にトラブルが相次いだ中、まったくトラブルに見舞われなかったこと。まずは上々の滑り出しとなった。


セッション2は完全なドライコンディションに変化。このセッションは都筑選手からの走行となり、開始から間もなく赤旗が出る波乱はあったが、再開からわずか2周で都筑選手は1分29秒716をマーク。その後更なるセット変更を繰り返し新田選手も攻めの走りを見せ、やがて1分28秒131にまで到達する。そして、間もなく残り40分となるところから都筑選手が再びドライブ。ピットストップを一度挟んで、合計25周をコンスタントに走行。このセッションの順位は13番手につけることとなった。


日曜日午前のセッション3は、都筑選手からの走行に。セーフティカーシミュレーションの後、オイル処理のため赤旗が出され、本格的に走り込むには約30分を要することとなった。再開後の都筑選手は好調そのもので、スティント後半には1分29秒459をマーク。そして1時間目が間もなくというところで、新田選手に交代。直後に二度目の赤旗が出るハプニングはあったものの、仕切り直されてからは周回を順調に重ねていく。四回のピットストップのたびセットを詰めていき、終了間際には新田選手がアタックモードに入っていく。ラスト1週で1分27秒737にまで短縮を果たすことになり、13番手につけることとなった。

午後からのセッション3は、本番さながらのスタート練習から開始された。3月とは思えぬほど気温が上がっていたこともあり、ロング(周回を重ね続けること)がかけられることになる。最初にステアリングを握ったのは都筑選手。いかに練習とはいえ、いきなりスタートを任されたのは、いち早くチームから評価された証明に他ならない。そつなくこなした後は赤旗中断の16分目まで周回を重ねた。再開後は新田選手がドライブ。一度だけ自らピットに戻ったものの、その後は二度の赤旗中断まで走り続けたのだから、中断がなければ、どれだけ走行できたか。セッション1でも触れたが、マシンには最後までトラブルが発生せず、いかに耐久に優れているか証明された格好だ。


残り30分を切って、仕上げの走行に。しっかりとニュータイヤに熱を入れた後、新田選手は1分27秒705を記録して6番手に浮上。ラスト10分都筑選手が乗り込み、チェック走行終了後ここで初めてニュータイヤを装着。タイヤに熱が全く入っていない状態にもかかわらずテストにおける自己ベストとなる1分29秒051を出したところでチェッカーが振られることとなった。


初走行でいきなり高いポテンシャルを示した、都筑選手と新田選手、そしてフェラーリ488 GT3。どうやら今シーズンは、大活躍を期待できそうだ。次回の公式テストは1週間後の富士スピードウェイが舞台。3月26〜27日に開催される。


■チーム監督 小林 敬一


今回のテストが事実上、初めての走行で、イタリアから来たそのままの仕様でシェイクダウンを終えたのですが、特に問題は生じませんでした。日曜日からは新田選手がいろいろセットチェンジをしつつ、クルマの素性を探りながら走行していて、まだまだ詰め切ってのアタックはやっていないので、いろんないい意味での課題を残した、いいテストになったと思います。すごいですよね、僕自身もフェラーリのGT3には、今まで関わることはなかったんですけど、イメージ以上に良くできたクルマです。都筑選手とは初めて一緒にやるに等しいのですが、とても新田選手ともうまくやれているし、自分に課せられているパートはしっかり走って、メニューをしっかりこなしているので、心配がないというより、いろいろ期待が保てるドライバーですね。このクルマならば、上の方を狙ったレースができるんじゃないかと思います。


■ドライバ― 都築 晶裕


初めて車両に対面、乗り込んだわけですが、思っていた以上に乗り易く、ポテンシャルの高さも感じることが出来ました。今回はシェイクダウンという形なので車の特性を掴むことだけに集中しアタック走行までは持っていけませんでしたが、セット変更にも素直にレスポンスしてくれて、まだまだセットも煮詰める必要性はありますが、新田選手と一緒により良い方向性にもっていきたいですね。今シーズンが非常に楽しみです。


■ドライバー 新田 守男


まずはここまでノートラブルで来ているので、そこはなかなか良かったと思います。まだクルマの性格を探っている最中なので、本格的なアタックはしていませんが、だんだんその性格も、方向性もつかめた感じで、まだ完璧にはなっていないですけど、いい感触が得られました。もともとの素性をすごく良く感じますが、レベルの高いスーパーGTのレベルに合わせようと思うと、追及点にいろいろ問題もある。どの手法を採って、どこを直すかっていうのをやっていましたが、最後にいいものも見つかったし、方向性が見えたので、今は気持ちもいい感じです。そんなに簡単じゃないことは分かっていますけど、このクルマでまた勝ち星を重ねたいですね。


■エンジニア 成澤 健二


今回のテストで分かったのは、このマシンの素性の良さと思った以上の空力マシンということで、少しの車高の変化で空力性能もかなり変わってくるようです。テスト終盤ではセットアップの方向性も見えてきましたが、次回富士のテストでは空力の部分に関してもドライバーコメントをもとに走行中の車高変化を把握しながらセットアップを進めていきたいと思います。